谷崎潤一郎全集

癇癪老人日記

谷崎潤一郎全集編集室の非公式記録です。書誌や資料についてのあれこれ

生前に刊行された全集の土台

谷崎潤一郎全集」は、中央公論社から谷崎の生前に一度、没後に二度、合計三回編纂され刊行されている(詳細はこちら)。その前に個人作品選集が何種類かでていて、全集の土台となっている。主なものは下記の通り。

改造社版が刊行されたのは昭和五年なので、中期まで、といったところ。谷崎自身は中央公論社から全集がでるまで、この改造社版の全集をくりかえし読んで手を入れていた。*1

谷崎潤一郎文庫」は文庫といってもB6に近く(確認)、いまの文庫判よりだいぶ判型が大きい。

*1:赤字を書き込んだ本が現存する。中央公論新社所蔵。

中央公論社から刊行された谷崎全集

谷崎潤一郎全集」は、これまで中央公論社から谷崎の生前に一度、没後に二度、合計三回編纂され刊行されている。以下はそのリスト。

  1. 谷崎潤一郎全集」全三十巻(昭和32年12月~昭和34年7月、中央公論社
  2. 谷崎潤一郎全集」全二十八巻(昭和41年11月~昭和45年7月、中央公論社
  3. 谷崎潤一郎全集」全三十巻(昭和56年5月~昭和58年11月、中央公論社

それぞれ、下記のような特色がある。

  1. 「新書判全集」とか「自選全集」などともよばれている。二段組みで文字がひどくちいさいが、30巻あってもあまりかさばらない。古書店でいまだに安価に買え、本人が選んだ作品がコンパクトにたのしめる(刊行後に発表された作品群はのぞく)。棟方志功の板画が金糸で再現された豪華な布装、函入り。豪華なのに手軽な新書判だというのがセールスポイントで、「豪華普及版」とうたわれた。
  2. 谷崎が昭和40年に亡くなったので、その後出た全集、「没後版」と呼ばれる。菊判函入りで文字も大きい。この全集で初期の作品など、本人が気に入らないからという理由で1から省かれた作品が編年体で読めるようになった。省かれた作品にも魅力的な作品が多く、その理由をさぐるのも一興。
  3. 書簡や雑纂を中心に補訂し、2に二巻を付け加えたもの。「愛読愛蔵版」と呼ばれる。鴬色の箱が目印。

それぞれに月報が付いているが、それについては別項にまとめる。

このほかに昭和47年から50年に刊行された「豪華普及版」(1と同じ名前でややこしい)という全集があるが、これは「2」をひとまわり小さくしてA5判にしたもので、同内容。

現行では、3の愛読愛蔵版が決定版とされており、研究対象としてこれを使うのが基本になっている。しかし、これからあらたに決定版全集(仮)をつくろうとしているのだから、愛読愛蔵版にはない特色を出し、読者に満足していただき、研究者が納得する全集をつくらなければならない。*1

*1:まだ何巻構成なのかとか、あんなものやこんなことが……という特色をいってはいけないことになっている。非公式の記録ですが、したがうことにします。

法然院にお墓参り

谷崎全集の編集室が正式に発足したので、ご挨拶と成功祈念をかね、墓参りに行った。谷崎のお墓は京都左京区鹿ヶ谷(哲学の道のちかく)の法然院の墓地にある。境内は広いが、墓は一番高台の目立つ場所にあるので、すぐにわかる。

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 法然院の山門。

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「寂」の文字が刻まれた墓。松子さんとともに眠っている。

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冬場でさびしかったので、水できよめて花をたむけた。

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こちらには重子さんが眠っている。文字は「空」。ともに、大きな松の木陰にいだかれるように配置してある。花のころには、しだれ桜がみごとだそう。

卍(まんじ)の装幀が禁忌

フランスのガリマール社に写真を貸したときのこと。学生版プレイヤード叢書みたいなQuartoのシリーズに写真をのせるので御社所蔵の写真を貸してくれ、とのことだったが、結局時間がないので点検してくれ、になり、……(自主規制)……なかった。過去の展覧会の図録などから図版を複写したのがよくわかるレイアウト案で、これは……(自主規制)……写真のクレジットをきちんととって……(以下略)。

とまあ、老舗にしてはラフな仕事ぶりだと思ったが、見本が届いてさらにおどろいた。『卍(まんじ)』の単行本の写真が掲載されているのだが、タイトル部分が墨塗りになっていて、周囲にうつりこんでいるほかの書籍の写真が逆版である。つまり、写真をレイアウトした人は日本語も漢字もわからないので、「卍(まんじ)」をハーケンクロイツとみまちがえ、ハーケンクロイツは「右まんじ」なので全体を校了直前にわざわざ逆版に修正し、「卍」を墨塗りにした……ということらしい。

一応逆版の指摘はしたけれど、重版時修正はされるのだろうか。

河童忌と残月祭

谷崎潤一郎(たにざき じゅんいちろう) 1886年(明治19年)7月24日、東京生まれ。1965年(昭和40年)7月30日、逝去。

そういえば、谷崎の命日を「ナントカ忌」とよぶのをあまりきいたことがない。誕生日と命日が近接しているため、親族の渡辺千萬子さんが当時経営していたカフェで催し物をしたのがはじまりで、この時期を「残月祭」とよぶことはある。

明るいことが好きだった谷崎にちなんで、命日をどうこうするより誕生日をお祝いしよう、ということらしい。(正確なコメント資料後日付け加える)

奇しくも谷崎の誕生日は、谷崎の友人だった芥川龍之介の命日=河童忌。こっちはこっち、といったところかも。

図書館と検索システム

国立国会図書館

http://www.ndl.go.jp/

国立国会図書館蔵書検索 NDL-OPAC で所蔵資料の検索ができる。まずはここで検索。ただし、著作者の名前のよみかたが一般的なものとちがっていたり、ブラウザで表示できる文字がかぎられていたときの名残で、異体字が検索できなかったりするので注意。

国立国会図書館サーチ

http://iss.ndl.go.jp/

国立国会図書館サーチ NDL Search は、国立国会図書館の新しい検索サービス。ウェブサイトによれば、「国立国会図書館をはじめ、全国の公共図書館公文書館、美術館や学術研究機関等が持つ豊富な「知」をご活用いただくためのアクセスポイントとなることを目指しています。」とのこと。2012年1月6日からスタート。

東京大学附属図書館
http://www.lib.u-tokyo.ac.jp/
国会図書館だけではこころもとないので、ここか、都立図書館の検索をサブで使いたい。リンクが大変便利。

国立情報学研究所論文情報ナビゲータ CiNiiサイニィ
http://ci.nii.ac.jp/books/
学術論文や紀要、専門図書・雑誌などを検索できるデータベース・サービス。PDFで公開もされている資料もある。

都立図書館
http://www.library.metro.tokyo.jp/
国会図書館だけではこころもとないときに検索したい。中央図書館と多摩図書館があり、館内で使えるオンラインデータベースがある。江戸東京のコレクションもある。

Amazon
http://www.amazon.co.jp/
いわずとしれたネット上の巨大ショッピングモール。比較的最近の書籍は書影がみられるので、図書館のデータベースに省略されているような要素やデータを目視したいときには使える。

書誌スタイル 新聞篇

書誌スタイル 新聞篇

  • 明治四十五年(一九一二)二月十一日発行の「読売新聞」第七面(日曜附録第二面)に発表
  • 明治四十三年(一九一〇)三月一日から六月十二日まで「東京朝日新聞」「大阪朝日新聞」に連載
  • 明治四十三年三月一日~六月十二日「東京朝日新聞」「大阪朝日新聞

以下は夕刊の場合

*1

「付」をつけた場合とつけなかった場合

  • ×年×月5日付「××新聞」夕刊〔実際の発行は4日夕〕
  • ×年×月5日「××新聞」夕刊〔実際の発行は4日夕〕
  • ×年×月5日「××新聞」夕刊〔4日夕発行〕

*1:凡例に戦前の新聞は夕刊が翌日刊行されたことをかくと親切。