谷崎潤一郎の未公開書簡
2014年11月25日 読売新聞朝刊に、「谷崎 情愛の288通――「細雪」モデル 妻・松子らとの書簡」(1面)「松子の存在 創作刺激」(38面)という記事が、つづいて「谷崎潤一郎の未公開の手紙 288通」というニュースが、昨日夜、NHKで放映されました。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20141125/k10013473021000.html
書簡群が書かれた時期は昭和2年から昭和38年まで。谷崎作品の中期から後期まで、三十年以上におよびます。
これら未公開の手紙288通(谷崎の書簡はこのうち180)に、これまで全集や松子夫人のエッセイに引用され知られていたもの、文学館の官報に掲載されたりして活字化されたものもふくめた総数351通(谷崎の書簡はこのうち243)が、2015年1月に中央公論新社から刊行される予定です。
谷崎潤一郎から松子・重子姉妹それぞれに宛たもの、及び松子・重子姉妹から谷崎宛の書簡を集めて翻刻したものです(仮題は「谷崎潤一郎の恋文」)。
NHKニュースは、本の刊行予定などは宣伝になるからでしょうか、本になることを説明してくださらなかったので、補足まで。
谷崎全集のウェブサイトができました
「谷崎潤一郎全集 決定版 全26巻」のウェブサイトができましたので、リンクをはっておきます。「オフィシャルな情報」は、こちらから。
http://www.chuko.co.jp/special/tanizaki_memorial/zenshu.html
川上弘美、筒井康隆、水村美苗のお三方が、「推薦のことば」をよせてくださいました。
下記のurlからは、内容見本がダウンロードできます。
http://www.chuko.co.jp/special/tanizaki_memorial/tanizaki_naiyo_web.pdf
こちらは紙の内容見本です。書店などで配布される筈。
天理図書館の「手紙」展
天理大学附属天理図書館で開催中の「手紙――筆先にこめられた想い/開館八十四年記念展」(2014年10月19日から11月9日まで)をみてきました。
天理図書館所蔵の名品のなかから、藤原定家から谷崎潤一郎まで、歴史上の人物から歌人、作家にいたるまで、時代も職業もさまざまな人物の「手紙」に焦点をあてた展覧会でした。
http://www.tcl.gr.jp/tenji/k84.htm
今回、奈良まで足をはこんだのは、谷崎潤一郎の、根津松子(のち谷崎松子)さん宛の手紙が展示されたからです。これは全集にもおさめられていない貴重な、お二人がまだ恋人同士になっていないころの手紙で、内容もおもしろいものでした。
ほかにも、曲亭馬琴の小津桂窓にあてた八メートルくらいにおよぶ手紙(内容はほとんど愚痴)や、森鴎外が軍医・森林太郎としてしたためた手紙、東大英文学科の講師時代の夏目漱石(金之助)が「僕は英文科の語学試験なんかつくりたくない(大意)」という手紙など、内容も文字も、その人となりがわかるようなセレクションで、みごたえがありました。東京では来年、天理ギャラリーで開催されるそうなので、書と人について興味のある方は足をむけてみてはいかがでしょうか。
天理図書館の外観を遠くから。昭和五年に建てられた建造物(坂静雄設計)です。ほんのすこし、紅葉がはじまっていました。
谷崎の戦争中につくった俳句異聞
谷崎の大戦中につくった俳句の、公刊されているものの初出は「A夫人の手紙」(昭和二十五年一月「中央公論文藝特集」)です。「A夫人の手紙」自体、虚構なのか実際の手紙なのかわからないように描かれているので、ちょっとひねりがありますけれども、これが活字化されたものの最初でまちがいなさそうです。